こんな本を読んでみまして、ぜひ紹介したいと思いました❗
子どもが自ら学び出す-自由進度学習のはじめかた-蓑手章吾(学陽書房)
学校教育の世界は、民間の世界に比べると、変化が遅いと言われます。
しかもそのスピードは、「新幹線」と「自転車」ぐらいの差があるらしいです笑
しかし、それでも約10年間ほど学校の先生を続けていると、
「ああ、学校もいろいろ変わっていくなぁー」と感じます。
変化の対象の一つとしては、何と言っても「授業」です。
先生が説明をして、黒板に書いて、それを子どもたちがノートに写す…
今でも存在する「一斉授業」ですね。
そして今、その一斉授業が変わりつつあります。
たとえば、このサイトでも時々紹介する、上越教育大学教授である西川純先生が提唱した『学び合い』。
そして、今回紹介する蓑手先生が書かれた「自由進度学習」です。
一斉授業とは一味違った授業です。
学校の先生ならば、自分自身の教育観をアップデートするために、ぜひ学んでおいても損はないでしょう❗
特別支援教育から生まれた優しい学習【蓑手章吾先生の自由進度学習を読んで】
書評のルール
誠に勝手ながら、書評をする際に僕なりのルールがあります。
それは、
僕の考えを述べる
です。
ただ本を読んで要約した「劣化版ウィキペディア」のようにはしたくありません。
劣化版ウィキペディアにするぐらいなら、僕が何も書かずに、そのまま原本を紹介した方が筆者のためになると思います。
あくまで僕のフィルターを通し(もちろん筆者への敬意を払って)、そこから何を学んで、何に生かすか、そんな視点で書いていきます。
このプロセスで「おいおい、ちょっとその解釈おかしくないか❓」という声が上がるかもしれませんが、そんなときはぜひコメント欄を活用して、お言葉をいただけたら幸いです。
ご了承くださいませ。
本物のユニバーサル・デザイン授業!
自由進度学習を僕なりの解釈でイメージすると、
同じ時間に、同じ空間で、違う内容を学んでいる授業
だと考えました。
普通の授業だと違いますよね。
子どもたちは「同じ時間に、同じ空間で、同じ内容」を学んでいます。
同じ内容というのは、学習内容はもちろん、「学習のペース」とも考えられます。
普通の授業は、
・国語では先生の発問を元に読解の授業を行う。
・算数では先生の指示のもとで、教科書○ページの問題を解く。
「同じ時間に、同じ空間で、同じ内容」を学んでいます。
もちろん、この授業が良くないだなんて言うつもりは全くありません。
個人的に僕は一斉授業好きです笑
でも『学び合い』も好きです笑
そんな話はさておき、ただ、授業スタイルの好き・嫌いではどうしようもない現場があるのですね。
それが特別支援教育です。
蓑手先生は特別支援「学校」の経験者。
僕は特別支援「学級」の経験者です。
公立の通常級から特別支援教育へ異動してくると、とてつもないショックを受けるのです。
「自分の教育実践が通用しない…」と。
学校ですので、特別支援教育も子どもたちは「同じ時間」に授業を受けたり、遊んだりします。
そして、教室という「同じ空間」で授業を受けます。
しかし、学習内容がその子によって違います。
ある6年生の子はひらがなを学び、ある3年生の子は漢字を学ぶ。
これが特別支援教育です。
これは年齢とか学年とかではなく、どこまでもその子に寄り添い、その子のペースに合わせた教育です。
「自分の教育実践が絶対正しいから、みんなやれ❗」という想いでいると、見事に天狗の鼻をへし折られます笑
特別支援教育の視点を、通常学級の授業に取り入れる「ユニバーサル・デザイン授業」というものがあります。
ユニバーサル・デザイン授業のテクニック論として、たとえば黒板周りの貼り紙をなくしてスッキリさせる、といったものがあります。
ただ、本当に特別支援教育の視点を取り入れるなら、
通常学級でも、子どもたちは、同じ時間に、同じ空間で、違う内容を学んでいる授業にすることではないかと思います。
自由進度学習は、たとえば算数なら自分の目標に合わせて、それぞれのペースで取り組む学習スタイルです。
特別支援学校を経験された蓑手先生は、自由進度学習に、まさしく特別支援教育、ユニバーサル・デザイン授業の視点を取り入れたのではないでしょうか。

一人ひとりに寄り添った優しい教育やな❗
めあてと振り返り
自由進度学習では、本時の授業に対して、子どもたち自身が「めあて」を立て、「振り返り」を行います。
ただ子どもたちに「さぁ、これから自由に勉強しなさーい!」と言っても、なかなか上手くはいかないでしょう。
やはり、教師のファシリテーターが必要になります。
そこで個人的に素敵だと思うのが、
・達成できるかギリギリのめあてを考えること
・めあてや振り返りをみんなで共有すること
この2つです。
達成できるかギリギリのめあてを考えること
たとえば、
「今日の僕のめあては、教科書○〜○ページを終わらせることです」
と、めあてを立てた子がいたとします。
そして、楽勝で終わってしまったとします。
めあては達成。
しかし、蓑手先生は、
「それでは、めあての立て方がまだ甘い」
と言います。
人間のやる気が高まるのは、自分にとってギリギリ達成できるか、できないかの目標があるときです。
要は、目標の立て方が非常に大切なのですね。
もちろん、目標の立て方は大人でも難しい。時間がかかります。
しかし、子どものときから、そのような習慣を身につけるのは素晴らしいことだと思います。
また、このめあての立て方に関しては、学級経営上の配慮もあるように感じます。
全員が同じ目標なら、そりゃ得意な子、不得意な子が生まれ、自ずと「早く終わった」「正解数」の競争が生まれます。
しかし、自分自身が立てた目標なら、勝負の相手は他ならぬ自分です。
本著の冒頭にも、蓑手先生は競争の教育に対して疑問を持っていた、と述べられていました。
まさしく蓑手先生らしい配慮だと感じました。
めあてに対して、それほどのクオリティーを求めれば、必然と振り返りの質も上がるでしょう。
課題の成果はもちろん、目標の立て方においても振り返りをすることになるからです。
めあてや振り返りをみんなで共有すること
蓑手先生のクラスでは1人1台のノートパソコンがあり、「スクールタクト」という、お互いの意見を共有できるツールを使っています。

スクールタクトを活用し、子どもたち同士のめあてや振り返りをお互いに共有します。
必然と目標を他人に宣言するカタチになってやる気が高まったり、他人の振り返りを自分の学びへプラスしたりすることもできます。
実は、あの青山学院大学陸上部の原晋監督も、部員に対して、蓑手先生と同じように、目標を共有し合うメソッドを取り入れています。

蓑手先生はICTを用いた教育も堪能やで❗
自分で学べる力
自分でめあてを立て、学習し、振り返りができるようになると、いつでもどこでも学ぶ力がつきます。
学校という空間に縛られません。
自由進度学習が真価を発揮したのは、新型コロナウィルスがあって休校になったときだったと思います。
ICTが堪能な蓑手先生は、Zoomやスクールタクトを活用し、休校中も子どもたちと繋がっていました。
子どもたちは、自由進度学習で身につけた学び方を、休校中も生かしていきます。
自分で学べる力が身につけば、いつ、いかなる状況になっても、学びの時計が止まることはありません。
それを見事に具現化したのが、蓑手先生だったのではないかと思います。

同じ教師として見習わんとな❗
まとめ:机間巡視から見る優しさ
蓑手先生は、とてもフレンドリーで優しい。
自由進度学習は、『学び合い』のように、子どもたちに時間を託せば、教師は比較的フリーになります。
蓑手先生はその時間に何をやっているのか❓
何周も何周も机間巡視をして、子どもたちを観て、子どもたちに声をかけています。
自由進度学習はシステムさえ学んでしまえば、簡単にできてしまう気がします。
しかし、子どもを自由にするのは、ある意味「諸刃の剣」です。
良い姿も見せるときもあれば、良くない姿を見せることもあります。
たとえトラブルがあったとしても、きっと蓑手先生はその優しさで一つひとつ丁寧に、子どもたちと向き合ってきたのだと思います。
いい本でした❗ 自由進度学習❗
自由進度学習の本質を学ぶと同時に、蓑手先生の素晴らしさについても学ぶことができました。
ぜひ、自分のクラスでも生かしていきたいです❗
今日のシン・キョウシ格言
「自由進度学習は優しさに溢れている教育だね」
ハルキ
コメント
著者の蓑手です。
お読みいただき、またこんなにも素敵な感想をいただいていることに今更気づきました!
ありがとうございます!
他の記事からも学ばせていただきます。
取り急ぎ、御礼まで。
蓑手先生
コメントありがとうございます! とても光栄です!
ぜひ今後とも色々学ばせてください!